優しくなくていいから

悲しい顔はしないーでー♪

失ったものと得たもの

気が付けば年が明けて1週間、全日本からはずいぶん経ち、年末休暇も長めにとれたおかげで、全日本で疲弊した心と体も何とか回復してきた。と、まぁ私が回復してても仕方ないので、ただただ大ちゃんの足が一日も早く治ることを祈り続けるしかない。

先日は、激励会や壮行会のニュースで元気そうな大ちゃんを見られて、少しほっとした。

オリンピックの代表に彼が選ばれたことは本当に素直にうれしい。

でも、彼が背負ったものの重みを考えると不安もあった。どんな理由であれ批判的な意見の人もいるだろうし、何より彼自身が誰より自分に厳しいから、年末のインタビューなどは見ていて苦しく感じたりもした。

代表発表からここまでの間にいろんな記事や彼の発言などを見てきて、きっと彼は誰が自分をかばう発言をしても、それを鵜呑みにはしないだろう。むしろ、批判された方がすんなりと受け入れそうだ。おそらく彼自身が一番自分を責めているから。彼があの代表発表の場でリンクに立つまでには、我々が思っているよりも大きな覚悟をしたのだろうと思う。あの日の声援に涙したのは、もしかするとブーイングされるぐらいの覚悟をしていたからなのかもしれない。

それでもオリンピックに行きたいのだと彼自身が認識できたという意味でも、必要な経験だったのだと思わずにはいられない。

代表発表の日は、男子の競技はなかったので会場でのあの歓声はファンである私たちの予想も超えていたが、あの歓声により彼は心に抱えた重みをプラスに変えることができたのではないかと思う。

振り返ると去年一年は彼にとっては厳しい年で、見てるだけのこちらからしても辛い場面も多かった。でもそれ以上に、そんな中でさえ、どんどん進化していく彼のスケートがただただ素晴らしくて、成績としてはうまくいかなくても、彼がどれほどの努力を積み重ねていたのかは明白だ。

年始早々過去のNHK杯の演技をまとめた番組を見ながら、驚いたのはここ数年の進化。そして今シーズンの演技はもう全く隙がない。NHK杯がほぼ同じ時期であることを考えるのであれば、プログラムの完成度は他のシーズンの比ではない。エレメンツのミスはあったとしてもだ。スピードも演技の流れもよどみなく無駄がない。

今回の怪我というアクシデントで、おそらく彼は失ったものもたくさんある。前人未到の8回目のGPF出場も、おそらく最後になるだろう全日本での表彰台も、オリンピック前に確固たる自信にできるような結果も。

けれど、そんなことは些細なことだと、そう思わせてしまう演技が彼にはできると証明をした。

メディアで大きく取り上げられている手からの出血も、FS後のインタビューの涙も私を含めて会場にいた人のほとんどは知らなかった。それでもその演技だけで彼はあの広い会場の観客にすべてを伝えていた。

だから得たものの方が大きかったと、そう思えてしまう。信じられてしまう。

失ったように見えるものは、ただの形でしかなくて、彼が努力して進化していたことを消し去るものではない。それよりももっと必要な何かを得るための試練だったのだろう。

この試練を本当の意味で乗り越えるために、彼は今も戦っている。

だから今はオリンピックでの演技を楽しみにして、ただただまっすぐに応援していこうと思う。