優しくなくていいから

悲しい顔はしないーでー♪

そしてありがとう

公式練習の情報を聞いていて、ずっと辛くて仕方なかった。この試練がなんだったのか、どうして彼のスケート人生の最後の一年がこんなに苦しみばかりだったのか。ショートが終わってのこの一日もそんなことばかり思ってた。

正直オリンピックですべて報われれば、報われるべきだったと今だって全く納得はいってない。

でもそれがオリンピックなんだと、その時の運をつかめるかつかめないか、ただそれだけ。

それでも、最後の演技を笑顔で終えた高橋選手に、本当によく頑張ったって、どんなメダルをとるよりもあなたのスケートは一番だったと、そう伝えたかった。

全日本からの、いや怪我をしてからのこの二か月が私なんかが想像できないほどに過酷だったということが、この数日間の彼の表情を見ていればわかった。何もかも達観したような、透明感に溢れた表情。この場に来るまでに彼がどれほどの戦いをしていたのか、それを物語っていた。

やっぱり高橋大輔は世界でとても愛されてるスケーターだ。

以前から言っているけど、今の採点基準は彼にはまったく有利ではない。今回のオリンピックフリーをみていて、高橋選手と同世代のちょうど採点基準が変わったころに10代後半から20歳ぐらいだった、おそらくバンクーバー前まではGPSや世界選手権などでトップ争いをしていたけど、ここのところはあまり日の目を見なかった選手たちなのだけど、それぞれにミスはあってもフリーでは良い演技をしていた。でも皆思ったほど点数がのびない。

採点基準が変わるというのはこういうことなんだと思った。価値観を根本からひっくり返させられる。だからその採点法で育った若い選手が出てきたら自然と彼らの評価は低くなった。そして不遇の時代を過ごしてもなお27歳、28歳という年齢まで頑張っていた彼らにはスケートに対する愛情と、自身のスケートに対する揺るぎない誇りがある。

だから高橋選手は夢だと思う。これだけ彼の能力を評価するには向いてない採点基準の中でさえ、これだけの点数を取ることができる。コツコツ積み重ねた努力と、そんな彼のスケートを愛する人の気持ちが見える気がする。

これだけジャンプの評価が高い採点方法の中で、あそこまでジャンプの調子が悪いのに、それでもまだメダル争いに食い込めること、フリーのPCSはチャンに次いで2位だったことを思えば、足さえ万全であれば確実に金メダル争いができていたことの証明だった。

彼の演技には採点方法や基準を超えた何かがあることをみんなが知ってる。世界中のたくさんの元スケーターやスケート関係者がここにきても彼への激励や称賛を惜しまないのは、そういうことなんだろう。

彼がこの後どういう道を選ぶのか、今の時点ではわからない。日本は当分の間お祭り騒ぎで、きっと彼のことはほとんど報道されなくなるだろう。

それでも、私はうわべの結果だけ見て、一見、日本国民のほとんどの人が喜び浮かれていたとしても、彼のことを思って眠れぬ夜を過ごしてる決して少なくない数の人々の想いの方がずっとずっと重いし、大切なものだと思ってる。

あなたに「ありがとう」と「最高の演技だったよ」という言葉を届けたくて仕方のない人がいっぱいいることを忘れないで。あの状態であれだけの演技をして、笑顔で終わったあなたは本当に強くて美しい。あなたのソチでの演技は日本なんていう枠じゃなく、あなたを応援するすべての人にとっての誇りです。